職員募集 正・准 看護師 / 常勤医師 / 院内薬剤師 募集!
スタッフが落ち着いて働ける環境をつくることが、良い看護へつながると信じています!

クリニックからのお知らせ

お勉強

慢性腎不全患者さんの骨(第一報)

 

  • 人の骨(構造)

骨は骨膜に包まれ、皮質骨および海綿骨からなる。皮質骨は骨の表層、海綿質は内部に見られその間隙には骨髄がある。

骨膜は骨を保護するとともに骨の成長や再生の役目があり、皮質骨は層板構造を有し、オステンという円柱状の構造体を形成する。海綿骨は網目構造を形成、豊富な血管と血液が充満し骨髄を構成、骨代謝回転は皮質骨に比べてはるかに早く、したがって、初期の骨量減少が認められるのは海綿骨である。

骨髄は血液に富み、赤血球白血球、リンパ球血小板のもとになる巨核球などに分化できる造血幹細胞が存在する。

image001

  • 骨代謝

皮質骨は全身の骨量の80%を海綿骨が残りの20%を占めており、これらは代謝速度も異なっている。両者は常に, あるいは代謝状態に合わせて新陳代謝を繰り返しており、骨を壊し吸収する (骨吸収) のは破骨細胞であり、 新たな骨を造る(骨形成) のが骨芽細胞で、両者の働きによって活発に吸収と再構築が行われ、正常状態では一定の骨量が保たれている。これを骨のリモデリングと言う。

これを模式図(図1)および実際の骨生検像(図2)で示すと下記のようになる。

cap01

(図1)

cap03

(図2)

  • 慢性腎不全患者の骨代謝

通常は、カルシュウムとリンの代謝異常によってもたらされる代謝性骨疾患であり、その対策は、カルシュウム値を正常範囲内に管理し困難ではありますが、リンの管理を厳密に行い、余分な副甲状腺ホルモンの分泌をさせないようにする事です。

  • 慢性腎不全患者での骨疾患には、骨組織学的には繊維性骨炎型、軽度変化型、混合型、骨軟化症、無形性骨型などに分類される。なかでも最も問題となる繊維性骨炎型について説明します。
  • 二次性副甲状腺機能亢進症
    cap04

副甲状腺は、甲状腺の裏側にある米粒の半分くらいの大きさで、左右両葉の裏面の上下に2対、合計4個あり上皮小体とも言われています。その作用は甲状腺とは全く異なるもので、骨代謝の主役をなす重要な臓器です。

その作用は、体内のカルシウム濃度の調節を行うカルシウム濃度受容器を有し、カルシウム濃度の状態に応じて副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone: PTH)が分泌され

カルシウム濃度の調整を行っています。

腎臓の機能が失われた腎不全状態では体内のカルシウム濃度が低下し、これに反応して副甲状腺から過剰にPTHが分泌される「二次性副甲状腺機能亢進症」となります。

二次性副甲状腺機能亢進症になると、骨吸収と骨形成(リモデリング)が激しい高回転骨となり、骨形成が骨吸収に追いつかなくなり骨融解状態のため骨量が減ってしまいます。(骨吸収)

  • 治療と対策

ビタミンDの投与でカルシウムを骨から血液中に送り出したり、腎臓や腸から吸収したりして、血液中のカルシウム濃度を上昇させPTHの分泌を抑制する事です。

最近では、PTH分泌を強力に抑制する化合物(CaR作動薬 calcimimetics:みせかけのカルシウム薬)の投与があります。みせかけとは言え、血中PTHやカルシウムの低下,さらには、副甲状腺細胞の増殖抑制,線維性骨炎発症抑制など多くの薬理作用が認められ慢性腎不全患者さんには必須の薬物となっている。

こういった薬物療法以外に手術療法(副甲状腺摘出術)があり、当院では積極的に手術療法を取り入れて(下図)、骨量管理と骨折予防、感染や癌抑制、生命予後管理などに大きな成果を挙げている。
image012

 

  • 透析患者での骨障害

骨形態計測による分類によれば、線維性骨炎、軽度変化型、混合型、骨軟化症、無形性骨型などが存在する。

  • 線維性骨炎型:最も問題となるのが線維性骨炎であり、副甲状腺ホルモンが高値となる高回転骨といって骨吸収と骨形成が激しく、骨形成が骨吸収に間に合わなくなり、骨石灰化障害を起こしてくる。骨が融解し、カルシュウムやリンが血中に流入し石灰化して組織や血管に沈着してくる。心臓を栄養する冠動脈に沈着すると、心筋梗塞の原因となる。多くの透析患者さんのレントゲン写真を見ると、組織や血管に白い石灰化が見られる。

ビタミンDの無い時代は副甲状腺ホルモンの管理が困難で、骨のレントゲン写真を撮ると骨吸収像(骨表面の毛羽立ち/ごま塩頭)が著明であった。

  • 軽度変化型:一見正常にもみえるが,異常石灰化などの所見のため正常ではなく軽度変化型として扱われる。
  • 骨軟化症型:石灰化障害のため、低回転骨の状態で骨になる前の類骨が多く、骨折を起こし易い。昔は、透析上最も重要なリンの吸収剤としてアルミニュウムが用いられ、多くの骨軟化症や多発骨折が見られたが、現在、リン吸収剤としてアルミニュウムを用いる施設はない。
  • 混合型:線維性骨炎型と骨軟化症の混在型で、骨石灰化速度は亢進していない。
  • 無形性骨型:骨細胞成分が極めて少なく、骨回転を示す骨吸収や骨形成が見られず、ビタミンD治療に反応しないものをいう。線維性骨炎治療で余りにも、副甲状腺ホルモンを抑制し過ぎると無形性骨となる。

 

以下に、異所性石灰化や骨吸収像を提示します。

血管の石灰化

image014

  • ①大動脈の石灰化(1年毎に石灰化の進行が解る)

image015

  • ②手指骨の石灰化(指の間の動脈石灰化)cap05
  • ③冠動脈の石灰化(心臓の栄養血管)

cap06
頭骨の吸収像(ごま塩頭)

 

 

次回二報は骨粗鬆症について予定しています。