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クリニックからのお知らせ

お勉強

糖尿病壊疽について

今日は、糖尿病壊疽についてお話いたします。

糖尿病では糖が血管内に充満し、活性酸素(活性酸素とは空気中にある酸素分子(O2)は、酸素原子(O)が2つ結合したものです。酸素分子は、不安定な状態なので、他の分子の電子を共有して安定な状態になろうと狙っておりこれを活性酸素と言います。)が血管を破壊しさまざまな病態を引き起こします。

糖尿病では、先ず細い血管(図1)から障害される事によって下肢への血流が妨げられ、抹消への血流が閉ざされてしまいます。


(図1)特徴的なのは血管が数珠状に細くなっています。

下肢への血管は大腿動脈で膝から3本の動脈に分かれていくが、すでに膝の部位で詰っています。

血流が閉ざされると、抹消神経に酸素や栄養素が運ばれなくなり、初めの内は、シビレとか運動性はこう(100mくらいの距離が連続して歩けない)といった状態が見られ、不潔になり易いなど足趾では不注意に傷を付けたり、爪切りによる傷や水虫とかに細菌感染を来すなどして難治性膿瘍の形成し非常に危険な状態になります。血流が悪いため、抗生物質も充分に傷に届かずその効力を十分に発揮することが出来ません。その結果、切断とか最悪の場合には敗血症のために命を落とすことも稀ではありません。


(図2)

(図2) 足趾の先端から細菌が入り懸命の化学療法にも拘わらず、殆どが炭化してしまった状態で、さすがにここまでくると切断しか方法が無くなります。

このために、我々が如何にしてこの合併症を防ぐために取り組んでいるかご紹介いたしましょう。

  1. 毎日、入浴や足浴による清潔の維持。
  2. 出来れば、ストレッチや筋肉トレーニング、あるいは歩行などの有酸素運動など軽めの運動、或いはツボ押しやマッサージなどが血流改善に有効とされています。(我々の施設では、透析室に入る前に、待合室でロコモ体操というのをやっています)
  3. 爪切りは患者さんがやるのはご法度です。当院では看護師が細心の注意を払ってやっています。

下肢切断といった状況を来さないために、日々の足趾の観察が必要ですし、他覚的な所見も重要です。

(1)足背動脈の触診とドプラー聴診器による動脈音の聴取。

(2)SPP(Skin Perfusion Pressure:皮膚還流圧

皮膚還流圧とは、皮膚のレベルの微小循環の指標で、どの程度の圧で微小循環が灌流しているかを示しています。

30mmHg以下は重症虚血足趾とされ、更なる、検査、治療が必要とされ、傷が治るには最低40mmHgは必要とされています。


SPP測定器

(3)血圧脈波測定(これは、血管の硬さや詰まり具合を測定し、動脈硬化の進行度を知るため)

ABI検査(足関節上腕血圧比)とは、足首と上腕の血圧を測定し、その比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算したものです。

ABIが低いほど予後は不良とされていなす。

(参考:動脈硬化が進んでいない場合、横になった状態で両腕と両足の血圧を測ると、足首のほうがやや高い値を示します。しかし、動脈に狭窄や閉塞があると、その部分の血圧は低下します。こういった動脈の狭窄や閉塞は主に下肢の動脈に起きることが多いため、上腕と足首の血圧の比によって狭窄や閉塞の程度がわかります。ABIの測定値が0.9以下の場合は、症状の有無にかかわらず動脈硬化が疑われます。)

(4)PWV (pulse wave velocity) 検査(脈波伝播速度)

PWVとは、心臓の拍動(脈波)が動脈を通じて手や足にまで届く速度のことです。これで解るのが、糖尿病の血管のように動脈壁が厚く、硬くなり動脈壁の弾力性がなくなったり、細くなったりすると、脈波が伝わる速度が速くなります。


血圧脈波測定器

(5)血管撮影

これまでの検査はベッドサイドで可能ですが、血管撮影にはレントゲン室での血管撮影装置が必要となります。手技としては、鼠蹊部の大腿動脈触知部に局所麻酔を行い血管穿刺後、カテーテルを挿入、造影剤注入装置に連結します。下肢へと通じる動脈は、腹部大動脈から左右の総腸骨動脈に分かれ、総腸骨動脈は外腸骨動脈と内腸骨動脈に分かれます。外腸骨動脈は総大腿動脈となります。総大腿動脈は、深大腿動脈と、浅大腿動脈に分かれます。深大腿動脈は貫通動脈を数本分岐、浅大腿動脈は大腿内側を下行し、膝関節の後側を通って膝窩動脈となります。ここから前・後脛骨動脈、腓骨動脈の3本に分かれ足背動脈となります。

        

(4)治療(薬物治療)

以上の検査結果を参考にして、先ずは、アスピリン、クロピドグレル、プロスタグランジン(PG)Iなど抗血小板薬の投与を開始します。

 (血管内治療)

高度な狭窄に対しては、血管撮影によって、その狭窄部位を確認し、

経皮的血管拡張術やバイパス術へと繋げます。

   A(狭窄部位)      B(拡張用バルン)     C(拡張後)

   

  1. マゴット療法

    特殊ではありますが、我々はマゴット治療を行っています。マゴットとは(蛆虫)の事です。壊死組織の大きさに合わせて蛆虫の数を決め、壊死組織の中に蛆虫を入れ、2~3日のサイクルで蛆虫に感染性壊死組織を食べさせます。蛆虫は殺菌作用も併せ持ち、創治癒を行ってくれる優れものであります。しかし、残念なことに医療保険が使えない事から自費が必要となります。

    下記に示す症例は、68歳の女性で、受診2年前に糖尿病性壊疽で左下肢を切断しており、右足に火傷を負い、感染も加わって難治性の壊疽状態となり切断止む無しの状態で受診しましたが、切断することなく下記の治癒状態で退院となています。

    2006.5.22       2006.11.8       2006.12.4

    糖尿病は血管の病気であり、慢性腎不全、心筋梗塞、網膜症など極めて多くの合併症をもたらします。中でも下肢壊疽は下肢切断といった、その生命予後を左右するものであり、くれぐれも注意したいものです。

文責:矢嶋 息吹