職員募集 正・准 看護師 / 常勤医師 / 院内薬剤師 募集!
スタッフが落ち着いて働ける環境をつくることが、良い看護へつながると信じています!

クリニックからのお知らせ

最新情報

超高齢化社会における透析患者の看取り ~当院における姿勢と取り組み~

東京都内の公立病院における、積極的透析中止のニュースが、波紋を広げている。
当方としては詳細な情報がないので、この件に就いて発言は差し控えるが、透析患者の【看取り】について考える契機にはなった。

そこで、緊急発信として当院での現状を報告する。

2018年末、NHKスペシャル「人生100年時代を生きる 命の終わりと向き合うとき」という放送があった。
延命治療を80歳以上の9割の方が望まないという報告がある。しかるに、徹底できず救急センターに搬送され、自宅には戻れず、他院にて延命治療が継続されることになるという現実も多いことを紹介していた。
また、透析患者にもスポットを当てられ、透析困難症に対して、技術の進歩にて工夫の仕方が増え、衰弱した方、認知症を合併した患者に透析が継続される。これでは、患者の尊厳が失われていないか、本人のためになる透析医療を考えていくべきではと重い命題を提起されていた。

非常に示唆に富む内容で、また我々施設透析スタッフには、常に終末期の透析患者にどう接遇するかは悩ましい問題である。ここでなるべくわかりやすく整理してみたい。
さて我国の平均寿命は、伸び続けており2017年の統計では、女性87.26歳、男性81.09歳と世界でも有数の長寿国となっている。100歳以上の人口も私自身が生まれた1963年は153人であったが、2018年7万人弱となっている。この状況を受けて政府も人生100年時代構想会議にて様々な分野において政策を検討している。
他方、透析患者の統計は、日本透析医学会が毎年調査を実施し、信頼性の高いデータを公表しているが、平均寿命については言及されていない。統計調査から把握できることは
大まかには

① 年次末の生存者の年齢は年々上昇している。
② 平均透析導入年齢が上昇している。
③ 透析導入疾患として、動脈硬化を主因とする糖尿病、腎硬化症が多い傾向が続いている。

などである。

果して、これらはどう言うこと意味するのであろうか。長年透析医療全般に携わる私なりの推論も含めて説明すると慢性腎臓病に対する啓蒙活動が浸透しつつあり、腎死(透析)に至る若年者は減少し、或いは大幅に遅らせるようになってきている。一方超高齢化社会において、腎死が先に来た場合、私も含めて大部分の医師が高齢者の透析治療を躊躇しない。また、一般的にも当てはまるが、特に動脈硬化性疾患に由来する合併症治療が進歩して透析開始後の余命を延長に寄与している。
その他諸々のことが、様々な研究結果などからも提示できるが本題から外れるので、いよいよ核心に進みたい。

どれだけ超高齢化社会になっても、死は誰にでも確実に訪れる。突然死という形も少なくない。しかしながら、ある程度それが予見できる際、在宅での平穏死の薦める書物が多数発行され、ピンピンころりなど在宅での【看取り】が耳目を浴びるようになって久しいが、透析患者は透析との関わりが簡単に断ち切れない事情があると私達は考えるので、在宅での【看取り】はなかなか思うようにいかないのが現実である。
急性期疾患で救命できる可能性がある方は、高次機能病院に勿論治療を早急に依頼する。
一方、20年前、10年前と比較し、高齢化によって間違いなく透析患者の様態は変化してきている。徐々に衰弱し食事摂取が低下している方や、心機能が低下し透析自体の実施も難しくなってきている方、筋力が低下し寝たきり同様の方、認知症が強くて高次機能病院の治療に適さない方などは状況によっては【看取り】を考えなければならない。その時期を頭の片隅にいれて慎重に毎透析ごとに対応しなければならない。当院は有床診療所であるが故に、方針としては、日々の診療と同等に当院通院患者さんに対しての【看取り】もご家族、ご本人の意見を尊重しながら対応したいと考えている。ACP(Advance Care Planning)*と言った概念も希望があれば、患者、ご家族と話し合うことも視野にいれようかとも検討はしている。しかし現状は、当院では、積極的透析中止は全く選択の余地がない。
ACPの時期を逃した末期癌合併や高度認知症の方などは、無床診療所では行き場がないという話も聞くことがある。これまでとは見知らぬ施設に入所できたとしてもおざなりにされることもあるようだ。
当方では、状況に応じ、その都度に最善と考える緩和ケアも押し付けがましくならないように留意して行っている。
患者より感謝のお言葉を頂戴したことは少なくないが、なによりお見送り後、ご家族より「ここで看取ってもらって本当によかった。」と伺うと人生の幕引きに関わることが出来るのは医療スタッフの冥利に尽きると痛感する。

本来は、かような短文に収まる話ではなく、多々触れなければならない問題を割愛した。
参考文献および書物なども誤解を招く虞れもあり敢えて掲載しなかった。

まずは拙文にお付き合いいただいた方に、感謝したい。最後に大切なご家族の【看取り】を心配される懸念される方々に何かご参考になれば幸いである。

*ACPとは:今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス。

文責 医療法人いぶきクリニック
医師 田端 作好