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お勉強

慢性腎不全の診療ガイド2012(2013.1.4記)

 日本腎臓学会は「CKD診療ガイド2012」を6月1日に発表した。学会は2007年に初めて「CKD診療ガイド」を作成し、2009年に改訂。今回は3年ぶりの改訂となった。国際腎臓病予後改善委員会(KDIGO)が今年10年ぶりにCKDの重症度分類を改訂したことを受けて、新たな重症度分類を導入。原疾患を踏まえ、末期腎不全や心血管イベントのリスクを評価し、治療目標を明確にできるようにした。血圧管理法も変更し、新たな推算糸球体濾過量(eGFR)の計算法も加えた。

 新しい重症度分類「CGA分類」
 今後、CKDの重症度は、「原因(Cause)」「腎機能(GFR)」「たんぱく尿(Albuminuria)」の3点を用いた「CGA分類」で評価する。
 これまではGFRと腎障害の程度のみでCKDのステージを決めていた。今回の改訂では、原疾患を踏まえた上で末期腎不全や心血管イベントのリスクを評価し、重症度を決める。これにより、治療の目標を明確にしようという狙いだ。  これまでは、新しい重症度分類はどのように決めるのか。「CKD診療ガイド2012」では、「GFR区分」と「たんぱく尿区分」の2つの指標を用いることになる。 
 「GFR区分」は今までと同様に、GFR値の高低により決める。今回変わった点は、区分がより細分化されたところ。以前はステージ1-5の5段階だったが、ステージ3(GFR 30-59)をG3a(GFR 45-59)、G3b(GFR 30-44)に分け6段階とした。ステージ3の中でも、GFR 45以下の群ではより末期腎不全や心血管イベントのリスクが高いことが、KDIGOのメタ解析により分かったからだ。
 一方、「たんぱく尿区分」は新たな概念となる。原疾患を「糖尿病」か「高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎、不明、その他」のどちらかに分ける。その上で、糖尿病ではアルブミン尿を、高血圧などではたんぱく尿の程度を見て、A1-3の3区分のいずれかに振り分ける。

 新たなCKDの重症度は、このGFR区分とたんぱく尿区分とをクロスで掛け合わせることで評価する。例えば、GFR区分ではG2、たんぱく尿区分ではA3の場合、CKD病期は「ステージG2 A3」と表記することになる。ただし、G1A1、G2A1の2群は「ハイリスク群」という扱いだ。「CKD診療ガイド2012」では、病期に応じて、治療方針、血圧、血糖、脂質、貧血の管理、骨ミネラル、カリウムやアシドーシス、尿毒素の対策、食事指導などを定めている。

 血圧は「130/80mmHg以下」に統一
 CKD患者の血圧管理法も変わる。これまでは「尿たんぱく1g/日以上の場合、降圧目標は125/75mmHg未満」としていたが、この基準はなくなり、すべてのCKD患者で130/80mmHg以下が目標となった。また、降圧薬の第一選択はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)だけとなっていたが、今回は患者の状態に合わせて薬を選べるように修正した。
具体的には、糖尿病および0.15g/g Cr以上のたんぱく尿を有する患者では、ACE阻害薬、ARBを第一選択とする。一方、たんぱく尿が0.15g/g Cr未満で、糖尿病でない人の場合、降圧薬の種類は問わないこととした。高度たんぱく尿(0.50g/g Cr以上)を呈する若年や中年患者では、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の使用を勧めている。  なお、高齢者の場合は慎重な降圧が求められる。まず、140/90mmHgを目標に降圧し、腎機能悪化や虚血症状がないことを確認してから、130/80mmHg以下への降圧を行うことを求めている。また、収縮期血圧が110 mmHg未満にならないよう注意している。

 新たな推算法「eGFRcys」
今回の改訂ではeGFRの計算法にも追加があった。今まで、eGFRの推算に利用する臨床検査はクレアチニンのみだったが、血清シスタチンC(クレアチニンと同様に腎臓経由で体外に排泄される蛋白)も加わった。シスタチンCを用いると、るいそうや下肢切断者など、筋肉量が極端に少ない患者でも、より適切にGFRを推定できると考えられている。なお、クレアチニンによる推算式は「eGFRcreat」、シスタチンCの場合は「eGFRcys」と呼ぶことになる。
 「CKD診療ガイド2012」は、腎臓専門医のみならず、広く一般に使用されることを想定している。患者に下記のいずれかがあれば、腎臓専門医への相談を推奨している。(1)尿たんぱく0.50g/g Cr以上、または検尿試験紙で尿たんぱく2+以上。(2)たんぱく尿と血尿がともに陽性(1+以上)。(3)GFRの値が、40歳未満では60未満、40歳以上70歳未満では50、70歳以上では40未満。

いぶきクリニック 矢嶋息吹