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慢性腎不全の診療ガイド2013の解説

慢性腎不全の診療ガイド2013の解説「慢性腎不全の診療ガイド2013」が出されました。
本文は設問、応答ふうに記載されていますが、医学用語も多く使われており、そのままでは一般の皆さんにとりましては理解できない箇所もあるかと思い、また、余りも専門的な箇所は省略し私見も交 えながらシリーズ風に順を追って説明していきたいと思います。
以下の文章を理解する上に、先ず簡単に腎臓の働きを理解しておくことが必要です。腎臓は先ず尿を作ることによって体液の恒常性を維持し、尿素などのタンパク質代謝物を排出、さらには、ビタミンDの活性化、エリスロポエチン(造血)やレニン(血圧調整)といったホルモンの産生を行う臓器です。下図のように糸球体、尿細管を一対としたネフロンから成り糸球体は血液を濾過して原尿を作成し、原尿は尿細管(近位および遠位尿細管に分かれそれぞれ異なった働きを行っている)で水や無機塩類、グルコースなどといった有効成分を含めその殆どが再吸収され尿となります。


診療ガイド2013はQ(質問)and A(答え)方式になっております。

【1】CKD の診断と意義

CKD は末期腎不全の危険因子か?

慢性腎臓病であるCKD(Chronic Kidney Disease=慢性腎臓病)は末期腎不全(腎臓の機能が全て失われる)の危険因子であり、腎臓の機能を表すGFR(=Glomerular Filtration Rate:糸球体濾過率) の低下と蛋白尿およびアルブミン尿は,末期腎不全の危険因子である。
腎臓は糸球体という濾過器で血液を濾過して尿を生成する臓器であってGFR の低下とは40~69歳で50 mL/分/1.73 m2未満,70~79歳で40 mL/分/1.73 m2未満とされている。蛋白尿とは濾過器のフィルター機能が障害され蛋白が漏出しまう状態である。しかし、起立性や運動性蛋白尿といった疾患とは無関係な蛋白尿もあり、蛋白尿だけでは判断出来ず医師の判断が必要である。

CKD はCVDの危険因子か?

腎臓機能の低下や蛋白尿およびアルブミン尿はCVD (=Cardiovascular Disease:心・血管病)の危険因子であり、その排泄量が増すごとにCVDの発症の危険性が増加する。

KDIGO のCKD 重症度分類(2011 年版)は,予後を反映するか?

KDIGO(=Kidney Disease Improving Global Outcomes)のCKD 重症度分類(2011 年版)はCGA分類=C/Cause(原因), G/GFR(糸球体濾過率), A/Albuminuria(蛋白尿)の3点を用いたCGA分類で評価するとされている。(慢性腎不全の診療ガイド2012参照/いぶきクリニックHPに記載)これは,CKD の進行,末期腎不全への進展,心血管死亡および全死亡と有意に相関し,CKD の予後を反映する。

KDIGO のCKD 重症度分類(2011 年版)に基づく診療方針は推奨されるか?

CKD ステージ3(GFRの値別に6段階に分類されている)をGFR 45 mL/分/1.73 m2を境に3a(45~59:軽度~中等度低下) と3b(30~44: 中等度~高度低下) に分割されておりこれはより腎機能障害の進行しやすいステージG3b の患者への早期治療介入を促進するために推奨される。 アルブミン尿を目安とした CKD 分類は,CVD の合併リスクが高く,その患者がRA系阻害薬(レニンやアンジオテンシン系の高血圧を抑える薬)に有効であるか否かを明確にするため,その分類は推奨する。
(RA=Renin Angiotensin)レニン・アンジオテンシン系:レニンとは血圧低下を感知すると、腎臓の細胞の一種である傍糸球体細胞から分泌されるタンパク質分解酵素で、アンジオテンシンとはⅠからⅡへ変換され、ナトリウム(塩)の再吸収を促進するアルドステロンの分泌を促進し、利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH=Anti Diuretic Hormone)の分泌を促進する。

CKD の診療では,尿中アルブミンと尿中総蛋白どちらを測定すべきか?

糖尿病性腎症の早期発見やリスク評価には,尿中アルブミン(アルブミンとは血清中に多く存在するタンパク質の一つでその持つ意味は非常に大きく、分子量約66,000で血清アルブミンのその約50~65%を占める)が推奨され、また進行した糖尿病性腎症や非糖尿病性CKD の診療には,尿中総蛋白測定が優れている可能性がある。
正常な糸球体は分子量の大きなアルブミンは濾過しないが、障害された糸球体では蛋白尿(或いはアルブミン尿として尿中に出現し、腎疾患の発見動機となる)が排出される。

CKD のフォローアップに有用な尿中バイオマーカーは何か?

CKD の予後の指標として,尿蛋白および尿中アルブミンの経過観察が望まれる。その他の尿中バイオマーカーこれはある特定の病気の存在やその進行度を濃度として表すものでその中にはα1 ミクログロブリン(肝臓で産生され腎糸球で濾過され尿細管から再吸収・異化され正常ではほとんど尿中には排泄されない蛋白)、β2 ミクログロブリン(腎糸球体で濾過された後、尿細管でその殆どが再吸収され、尿中にはごく僅かしか排出されない。尿細管傷害により再吸収能が低下したとき、尿中の排泄が増加する。そのため、尿細管傷害や慢性間質性腎炎などで異常値を示すことから尿細管障害や腎糸球体障害の局在診断として利用される)L‒FABP(ヒト腎臓の近位尿細管細胞の細胞質に局在する脂肪酸結合蛋白質です。これは組織障害が進行する前の尿細管の血流不全や尿細管への酸化ストレスにより、尿中に排泄されます)などが有望である。

血尿はCKD の予後を反映するか?

顕微鏡的血尿単独は,蛋白尿とは別の末期腎不全の危険因子であるが、蛋白尿に比較してその危険性は低く,健診などを利用した定期的な経過観察がのぞまれる。蛋白尿だけでなく,血尿を伴うほうが末期腎不全の危険性が増加するとされ、血尿や蛋白尿は腎炎など内科的なものだけではなく、尿路感染、尿路結石、尿路腫瘍などを含めた泌尿器科的血尿、蛋白尿も考慮に入れなければならない。

CKD の診断と治療方針決定に腎生検は推奨されるか?

顕微鏡的血尿単独は,蛋白尿とは別の末期腎不全の危険因子であるが、蛋白尿に比較してその危険性は低く,健診などを利用した定期的な経過観察がのぞまれる。蛋白尿だけでなく,血尿を伴うほうが末期腎不全の危険性が増加するとされ、血尿や蛋白尿は腎炎など内科的なものだけではなく、尿路感染、尿路結石、尿路腫瘍などを含めた泌尿器科的血尿、蛋白尿も考慮に入れなければならない。 CKD の診断と治療方針の決定のため,検尿所見を参考に適応を見極めたうえで,腎生検といって、超音波下で腎臓を確認しながら比較的血管の少ない下極をねらって小さな針で組織の一部を採取し顕微鏡にて組織診断を行うことは生検によって治療法を決定したり、病気の予後判定ができるため是非やったほうがいい。

CKD の診断に画像診断は推奨されるか?

現在は、US (=ultrasonography, US echo:超音波検査)、CT(=Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)、MRA(磁気共鳴血管画像)、血管撮影など非常に多くの検査法が開発され、腎臓疾患でも尿路結石,尿路の閉塞性障害,囊胞性腎疾患、腎動脈狭窄など形態学的異常を示す病気が多く、腎機能障害が示唆された時はまずレントゲン学的検査にてこれら泌尿器科学的異常がないかを確認しなければならない。

特定健診はCKD の早期発見と対策に有用か?

CKD の診断および重症度評価には,尿蛋白(もしくは尿アルブミン)と腎臓機能以外の影響を受けにくい血清クレアチニン(クレアチンリン酸の代謝産物で、筋肉に貯蔵されており、筋肉量に左右され男性が女性より多い)値の両者が必要である。多くのCKD は自覚症状(全身倦怠感、食欲不振など)を伴わないため,その早期発見には健診における蛋白尿と血清クレアチニンの測定が有用である。最近では同じタンパク質であり筋肉量や食事・運動の影響を受け難いシスタチンCが測定される傾向にある。
CKD の高リスク群である高血圧,糖尿病,肥満,メタボリックシンドローム,およびCVD をすでに発症した患者では,尿蛋白および血清クレアチニンの測定を少なくとも年に一度は実施し腎機能障害の早期診断を行い末期腎不全に対処すべきである。


いぶきクリニック 矢嶋息吹